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P.1 モーツァルト ピアノソナタ 15番 ハ長調 K545
ワルター・ギーゼキング(P)
英COLUMBIA 33CX 1358
このレコードが手に入ったら、もうLPを買うのは
終わりにしようと心に決めていました。
CDの音に愛想を尽かし、かと言ってLPは生産中止になった
1980年代後半から90年代。
空白を埋めるかのように、中古のレコードに救いを求めました。
それも、できるだけ音が良くてジャケットが素敵な
初期盤を必死になって集めました。
欲しいLPが、ほぼ集まった中で、一番好きなこの曲が
入っているLPだけが、どうしても見つからなかったのです。
数年後、すっかり諦めていた私の元に仙台のレコード屋さんから
夢のような連絡が.......。
これでもうレコードは買わなくて済みます。
最初のLPの紹介が最後のLPの話になってしまいました。
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P.2 モーツァルト ピアノ協奏曲27番 K 595
クララ・ハスキル(P) フェレンツ・フリッチャイ(cond)
バイエルン国立管弦楽団
独DGG LPM 18 383
店を始めた頃、モーツァルトの音楽は、眩し過ぎるように
感じられ、それほど好きではありませんでした。
ただ、店で流すのには好都合でした。
人の会話も邪魔せず、どんな時も耳ざわりな音がしません。
そんな思いを変えてくれたのが、このレコードだと思います。
一番最初に買ったのは、国内廉価盤のヘリオドール。
深緑のジャケットのレコードは、擦り切れるほど聴きました。
この盤のお陰で、モーツァルトの深遠さに触れられたと思います。
その後、ようやく手にしたレコードが左のDGG。
何回もカタログで探したレコード番号は、今でも覚えています。
ハスキルの真珠のようなピアノの音とオーケストラの響き!
ニ楽章の静寂感。その後、数多くのLP、CD、コンサートを
聴きましたが、これを超える演奏には出会っていません。
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P.3 J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 BWV 1007-1012
パブロ・カザルス(vc)
日EMI GR-2016 (1.2番)
英EMI COLH.16 ( 1.2番)
米ANGEL COLH.17 (3.4番)
英EMI COLH.18 (5.6番)
GRという言葉を聞いて、東芝のレコードを
思い出す人は50才以上だと思います。
紺色と金色のジャケットは、とてもシックでした。
今は無き、新潟の石丸電気さんで何枚買った事でしょう。
中でも名盤中の名盤と言えば、カザルスの無伴奏。
SP音源のこのLPは、針音こそしますが、
芯のある骨太のチェロが聴こえてきます。
楽風舎のスピーカー「シーメンス オイロダイン」を
最初に聴いた時もカザルスのチェロでした。
言葉が出ないとは、あの時の事を言うのでしょうか。
音楽のすごさを思い知らされました。
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P.4 鳥の歌 (カタロニヤ民謡、カザルス編曲)他
パブロ・カザルス(vc) ミエチスラフ・ホルショフスキー(P)
アレクサンダー・シュナイダー
(vn)
米COLUMBIA KL 5726
カザルスと言えば、このLPも紹介しない訳にはいきません。
カザルスが間もなく75歳になろうとしている1961年11月。
ホワイトハウスにおけるコンサートのライブ盤です。
ジャケットの写真の最前列には、若きアメリカ大統領
J.F.ケネディ夫妻が着座しています。
このコンサートの最後を締めくくるのは鳥の歌。
ホルショフスキーのピアノのトレモロの後から
カザルスの祈りの歌が聞こえてきます。
録音として残っている事に、ただ感謝するしかありません。
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P.5 ブラームス 間奏曲集 (10 INTERMEZZI FOR PIANO)
グレン・グールド (P)
米COLUMBIA ML 5637
旅行で京都に行った時の事、四条のレコード屋さんの
飾り棚に、このLPがありました。
グールドの数多くの録音の中で、一番多く聴いたのが
このブラームスの間奏曲集。
迷わず大切に荷物の中に入れ、旅行のお供となりました。
雨が降った日や、夜遅くに、小さめのボリュームで
流れるピアノの音は.....。
最近、このオリジナル盤と同じジャケットでCD
になりました。音もとても良くなったように感じます。
昨日、CDショップ「コンチェルト」さんに
立ち寄ったら、2枚もありました!
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P.6 J.S.バッハ ゴールドベルグ変奏曲 BWV
998
グレン・グールド (P)
米COLUMBIA ML 5060
先日、喫茶店で珈琲を飲んでいると、心地よいジャズの
BGMが流れてきました。
どこかで聞いた事のあるメロデイーです。
しばらく耳を澄ましていたら、なーんだバッハのG線上のアリア
ではないですか。
おそらく、バッハほど、さまざまなジャンルの音楽に
アレンジされている作曲家は、いないのではないでしょうか。
裏を返せば、それだけ旋律が美しく、自由さと普遍性が
あるという事でしょうか。
上の言葉で、真っ先に思い出されるのがグールド。
1955年に、このレコードでセンセーショナルなデビューをしました。
初めて聴いた時、颯爽として、湧き出るようなピアノの音に
衝撃を受けたのを憶えています。
録音されてから半世紀以上が過ぎましたが、グールド以上に
バッハの何でもあり。裏を返せば、揺るがない、本質的なものを
レコードに写したピアニストは、いないと思います。
ちなみに、最初に買った国内盤のジャケットがグールドの
スタジオ録音中の、連続写真だったという事は、このLPを買ってから
初めて気が付きました。
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P.7 J.S.バッハ 教会カンタータ集
カール・リヒター(cond)
ミュンヘン.バッハ.O/合唱団.他
独アルヒーフ 198402 他
昔、新潟の古町に、名曲堂というレコード屋さんがありました。
間口は狭かったのですが、奥行きのある店の高い棚に
このアルヒーフの、輸入レコードが飾ってありました。
見開きのジャケットに、厚いレコード盤が収められています。
センターレーベルは、きれいな銀で、指紋が付かぬよう気をつけて
扱った記憶があります。
あの頃、バッハの宗教曲といえば、リヒターを抜きには
考えられませんでした。この後、登場すると思いますが
受難曲やミサ曲は、カンタータと共に、狭儀の宗教という枠から
完全に突き抜けている存在だと思います。
それにしても、グールドとリヒター、二人とも
天国に行くには少し早過ぎました.....。
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P.8 恋こそはすべて ( LOVE IS THE THING )
ナット・キング・コール(vo)
東芝EMI T 824
一日中、クラシックを流している喫茶店の閉店後に
一番多く聞いたのが、このLP。
恋に落ちた時(WHEN I FALL IN LOVE)で始まり
恋こそはすべて(LOVE IS THE THING)で終わる
この素敵な、ラブ バラード集を聞くと
そのころの、夜の店内が目に浮かびます。
後片付けが終わるころ、カウンターの上には
珈琲に代わって、お酒が並びました。
ナット・キング・コールのビロードのような歌声は
友と飲む安い酒を、至福のものに変えてくれました。
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P.9 ベートーヴェン 交響曲 第九番「合唱」
ウイルヘルム・フルトヴェングラー (cond)
バイロイト祝祭管弦楽団、他
英HMV1286/7
ベートーヴェンが、「何で私の曲が出て無いのだ!」と
怒っている声が聞こえてきそうなので、この有名なLPを。
とにかく、ベートーヴェンほど、喫茶店に向いていない
作曲家はいないと思います。
その一番の理由は、聞き流せない、という事に尽きると思います。
お客さんが、おしゃべりしてるだけで、イライラして来ます。
初期のピアノ曲や室内楽は、まだ良かったのですが
中、後期の弦楽四重奏、ピアノソナタ、そして交響曲は
ほとんど閉店後に聴きました。
「時屋」でも、大晦日になると、居残ったお客さんと
ボリュームを上げてフルトヴェングラーの第九を聴くのが
恒例でした。
その後、レコードは初期盤になっても、若いあの頃
みんなで聴いた高揚感は、もう戻ってはきません。
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P.10 緑の地平線 ( HORIZON )
カーペンターズ
キング GP 235
このLPが、あの日、あの場所で流れていなければ
私の人生は、大きく変わっていたと思います。
オーディオと音楽に目覚めた、その店との出会いが
なければ、クラシック喫茶も始めなかったと思います。
まず、カレンの声のリアルさに仰天しました。そして
その後に出てくる、聴いた事の無いバスドラムの低音に
また口をあんぐり...。
その後、店に入り浸るようになり、ジャズやクラシック
が好きな人たちの影響も受けて、徐々に深みに...。
そんな思い出が、よみがえる緑色のジャケットです。
あの時のみなさんは、お元気でしょうか...。
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